前回に続いて、大学入試センター試験。
現代文・国語の第二問(大問2)には、小説が取り上げられます。
過去5年分、その出典となった書籍を紹介します。
現代文の教科書に掲載された作品と同じ作品集など周辺からの出題も多い印象です。
センター試験では、どんな小説が出されるのか気になりますね。
短編集が多いので、軽い気持ちで読めます。
男性の作家と女性の作家が交互に出題されるという説もありましたが、最近2回は女性の作家が続いています。
2016年はどんな小説が出されるのでしょうか。
2015年 「石を愛でる人」 小池 昌代『感光生活』
著者は詩人、小説家。
主人公は女性か男性かで迷ったという受験生からの声もありましたが、著者が女性なので、実際の体験をモチーフにした小説ということになるのかもしれません。恋愛小説ということになります。
出典の他の収録作品を読むと、日常生活を扱ったものが多いのですが少し狂気が感じられます。あまり健康な作風と言えない感じがします。
試験問題からの印象とギャップが感じられる典型ですね。
2014年 「快走」 岡本 かの子『老妓抄』
著作権が切れているので、青空文庫などで読むこともできます。
この作品集『老妓抄』からは著者最後の歌「年々にわが悲しみは深くしていよよ華やぐいのちなりけり」を想起させます。
『老妓抄』には他に高校教科書などで取り上げられた「家霊」も収録されています。
9つの短編集で読みやすいです。
センター試験の問題は小説の一部が使われることが多いですが、この「快走」は全文が試験問題として使われています。
2013年 「地球儀」牧野 信一 『牧野信一全集〈第1巻〉』
「シイゼエボオイ、エンドゼエガアル」「スピンアトップ・スピンアトップ・スピンスピンスピン」「フェーヤー? フェーヤー……チョッ!」という迷言が話題になりました。
この年度は評論で出題された小林秀雄の「鐔」とあわせて、苦戦した受験生が多かったようです。
初出は1923年と非常に古い作品。
これも、 青空文庫などで読むこともできます。
2012年 「たま虫を見る」 井伏 鱒二『井伏鱒二全集〈第1巻〉』
この全集の巻には、高校教科書でもなじみのある「山椒魚」が収録されています。
教科書に収録された小説の出典になった作品集を読んでおくといいということかもしれません。
「たま虫を見る」は幸福のシンボルのはずのたま虫が、主人公の小学生、大学生のころ、そして無職時代、校正時代のそれぞれのつらい状況の時に現れるという内容になっています。
2011年 「海辺暮らし」 加藤 幸子 『自然連祷―加藤幸子短篇集』
「ゴ・メ・ン・ナ・サ・イ・ネ」の急展開に、戸惑った受験生も多かったでしょう。
干潟近くで駄菓子屋を経営する老婆が主人公の小説。立ち退きを交渉する市役所の職員との会話で物語は進む。
したたかな老婆が印象に残りました。
この作品集も短編で成っています。これ以外も自然や自然保護をモチーフにした作品が多いです。
前回の大学入試センター試験・国語の題材の書籍・評論編 過去5年分とあわせて読んでみましょう。