テストに出そうな憲法改正の最新事情、日本国憲法5つの論点

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憲法改正は今夏の参議院選挙の争点の一つとなるのが有力です。場合によっては衆参W選挙も噂されています。自民党は野党であった谷垣総裁時代に憲法改正草案をまとめ、安倍政権の下で着々と改正に向けて政治を進めています。一方で現在、野党に転落した民進党(旧民主党)などその他の野党は党内の意見を集約しきれていなかったり、そもそも一切の改憲に反対の護憲の立場であったりと議論がなかなか深まらない面もあります。定期テストの勉強をする場合は、やはり現代の生きた政治と絡めて勉強したほうが点数を取りやすいものです。注目されている論点をきっかけに、定期テストの重要事項を押さえましょう。

平和主義に関して

日本国憲法の改正議論でいちばんに取り上げられるのが第9条の戦争の放棄です。

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

○2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

出典:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

 

条文を普通に読めば、日本が再び戦争をしかけることはまず起こらないでしょう。しかし、万が一他国から攻撃を受けた場合、戦力を持たずに国を守れるのかという懸念があります。日本には自衛隊が存在していますが、憲法上は戦力ではないと完全に拡大解釈されており、その状態の解消を求める声は根強いです。またこの条文が日米安保条約にも関わります。定期テストの試験範囲になった場合は、丸暗記を求める先生は多いです。また最近話題になった安保法制にも目を向けておきましょう。

硬性憲法を維持すべきか

日本国憲法は改正することが難しい硬性憲法と呼ばれています。施行から現在に至るまで一度も改正されたことがありません。

第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

○2  憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

出典:同上

 

この要件は厳しすぎるという声が上がっています。憲法は国の最高法規であり、容易に変えられることは望ましくないのは明らかです。ぎびしいの基準をどうするのかで見識が分かれるところです。「硬性憲法」⇔「軟性憲法」といったキーワードや「国の最高法規」であることは押さえておきましょう。

緊急事態への備え

日本国憲法に記載された緊急事態への備えはこの参議院の緊急集会のみであるといえます。あってはならないことではありますが、国内でテロが起こったときなどに非常事態宣言を行い一部権利を制限することなどのルールは決められていません。

第五十四条  衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

○2  衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

○3  前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

出典:同上

 

もちろん、人権が制限される状況は起こってはならないことで、権力者が恣意的な解釈をすれば、悪い独裁国家なりかねません。定期試験でも模試でもセンター試験でも衆議院と参議院の違いは間違いなく狙われます。参議院の緊急集会以外にも違いを押さえておきましょう。

天皇の位置づけ

天皇は日本の象徴です。しかし、国家元首ではありません。日本は大統領制を取っておらず、国家元首は存在しません。しかし、海外に行くと天皇は国家元首の扱いを受けています。

第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

第二条  皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。

第三条  天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

出典:同上

 

先の大戦の反省から生まれた象徴天皇です。ここを変えることは望ましくないでしょう。天皇も位置づけを象徴的な国家元首にしようという意見があります。天皇に関連したことでいちばん狙われるのは「国事行為」という言葉です。過去のデータを見ると皇室典範は試験ではあまり重視されていません。

地方への分権

地方自治に関した条文は次の4つです。地方分権に関連した条文を継ぎ足そうとおおさか維新の会を中心に主張されています。

第九十二条  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

第九十三条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

○2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

第九十四条  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
第九十五条  一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

出典:同上

 

地方に権力を移動させることで、一極集中を打破しようという主張が見られます。また道州制の導入の議論にも目を向けてみましょう。地方分権に関連しては、三位一体の改革なども押さえておきたいです。