「高校の勉強に意味はあるのか、あるとしたら具体的にはどんなことなのか」という疑問は高校生やこれから高校を受験する中学生の皆さんが一度は抱くことかもしれません。
周囲の大人に聞いても「いい大学に入るため」「いい企業に就職するため」とかそういう答えばかりで疑問が深まるばかり、むしろ反感さえ生みかねない場合もあります。
それらの答えも間違いではありませんが、もっと身近に感じられる答えの一つとして、皆さんにアドバイスができればと思います。これは学生さんだけでなく、親御さんにもぜひ読んで頂きたい内容です。
1.なぜ高校で勉強するのか
中学の次に入る学校で、みんなが行くから。それも間違いではありません。政府の学校基本調査の結果によると、平成28年度の中学卒業者1,169,415人に対して高校等(高専など含む)進学者は1,154,373人、つまり98.7%が進学しているのです。でもそれは進学する理由であって勉強する理由ではない、と思った方、あなたの批判能力は大したものです。ではなぜ高校で勉強するのか。というより勉強をなぜ続けるのか。それはあなたが先々自分の人生を選び取るためです。次項からで詳しく触れますが、勉強・学問は身を守る武器であり鎧です。中学までの勉強だけで世渡りするにはちょっとおぼつかないところを高校の勉強は補ってくれます。
また、勉強は先行きへの不安を打ち消し、具体性と根拠を以て目的地へのはしごをかける役割をします。義務教育が終わったその次の一歩で、まず知恵をつけることであなた自身の武器を持て、と言っているのです。
2.なぜ高校なのか
日本では、複雑な学校制度のある他国とは異なり、自身の進路を決めるにあたってとりあえず高校を選べば次の教育機関など次の目標や道を選びやすくなっています。というか高等専門学校(以下高専)などを除いてステップが高校しかないに等しいです。まず第一の分岐点が就職するか勉強するかなら、中卒者の正規雇用は大変厳しいこともあり、進学を選ぶ人が多いでしょう。つまり、あなたがこの先も自分の人生を自分で選んで生きていたいなら、まず仕事をするか高校での勉強をこなして見せてください、ということになります。そして高校進学を選んだのならカリキュラムから必要なことをもぎ取って見せろ、ということにもなります。それが次の目標、そして続いていく道を選ぶことにつながるからです。何せあと5年もすれば成人ですから、うかうかしてはいられないのです。自分のやりたいことを選ぶにも、道筋があるということです。
3.国語を学ぶ意味
ここからは具体的に教科を学ぶ意味を考えていきましょう。高校は中学までに学んだ基礎から、大学や専門学校など専門教育・研究への橋渡し。教育の育から教への重点の移り変わりの過渡期です。現状の進学率ではここまでが実質国民共通の基本教育と言えなくもないです。そこで学ばれる国語とは? コミュニケーションの基本である、文章読解力と表現力が求められています。ビジネス文書を読むにも書くにも当たり前ですが日本語が必要です。現代文が重視されるゆえんでもあります。それらを学ぶのが国語科であり、漢字の書き取りだけが国語ではないのです。あなたが本当に訴えたいことを表現し、実現していくための道具を与えてくれるのが国語科です。
4.英語(外国語)を学ぶ意味
今の時代、インターネットでかなりの情報が調べられますが、本格的に調査をしようとしたり業務に必要なデータを読みたい場合、英語の文献をあたらなければならないことも多いです。業界によっては英語が基本で社内は英語なんていう場所もあります。世界とのつながりで、ビジネスにも英語は不可欠です。
5.数学・理科を学ぶ意味
狡猾な他人に騙されないための知識のひとつです。運行のための計算なくして電車は動きません。代数・幾何・確率・統計、化学・生物・地学・物理の全てが私たちの日常を支え、社会が円滑に動く礎となっています。そしてグラフの読み方を知っていたり科学の知識があればまゆつば物の商品に騙される割合も激減します。
6.地理歴史・公民(社会科)を学ぶ意味
騙されないための知識にして世渡りの為の知識でもあります。法が国民のすべての行動を守る訳ではありませんが、自分の身の守り方、権利に伴う義務の扱い方、倫理とは何か、日本や世界がたどった道程(それは現在の社会のありようの礎です)、政治と経済の仕組みなど、仕事を始めれば必須ともいえる項目にあふれています。日本にいると危機感が薄いかもしれませんが、社会情勢的な意味で渡航=死の危険と隣り合わせの国や地域も沢山あります。自分の身を守る意味で欠かせない知識が実はこれらなのです。
7.専門教科を学ぶ意味
商業や工業など実務に結び付く科目がある場合、その付加価値を十分に生かしてください
(逆に言えば偏りを持たない均質な教育を可能とするのが普通科の利点でもあります)。社会に出てから簿記や商取引について学ぶのももちろん可能ですが、高校時代に勉強できるアドバンテージを大事にしてください。後々大学などで学ぶ人もいますが、大半の人は独学もしくは教室に通うか職場で苦労しながら知識を得るのです。
また、高校ではありませんが、高専という高等教育機関もあります。それぞれ将来に向けてのあなたの一歩を確実に助けてくれることでしょう。
終わりに
大雑把ですが高校で勉強する意味についてまとめてみました。若くて吸収力のある時期であること、多くは周囲の大人の庇護が受けられる時期であること、勉強に集中する環境がその後数年よりもずっと整っていることなどから中学卒業後の進学と継続的な勉強をお勧めする次第ですが、中卒や高校中退の人にも可能であれば定時制などでの高校生活をお勧めしたいところです。そこで学んだ知識は必ずあなたの武器になります。あなたの人生をよりよく生きるため、選択肢を広げるために高校という選択肢を考慮に入れ、そこでの勉強を大事にしてほしいと思います。