「小1プロブレム」「中1ギャップ」「高1クライシス」さらには「小4ビハインド」という言葉をよく聞いていますか。教育業界で使われるようになっていることが分かりました。
学生時代にも聞いたことがなかったので調べた人も多いでしょう。
それぞれの子どもを取り巻く環境が大きく変化する時期、これらの意味する期間は、まだ一般化されたものではないということです。
ここでは、それぞれ「小1プロブレム」・「中1ギャップ」・「高1クライシス」としましたが、いろいろな調査していると、「小1ギャップ」や「中1プロブレム」など統一されておらず表記ゆれを見ることができます。
それだけまだ定義のはっきりしない新しい言葉ということですね。
参考書籍:中一プロブレム (花とゆめCOMICS)
これらの用語に共通するのは、子供の教育環境が学習内容が大きく変化する時期とその変化に伴うリスクを示していること。特に進級・進学の変化の時期に子供が環境の変化に馴染めていない危険性を教えてくれる言葉です。
しかしながら、これらの語を使用することには批判的な意見や、注意が必要であるとの意見も多く見られます。
国立教育政策研究所の生徒指導・進路指導研究センターではこのように指摘しています。
「中 1 ギャップ」 の語は、いわゆる 「問題行動等調査」 の結果を学年別に見 ると、小6から中1でいじめや不登校の数が急増するように見えることから使わ れ始め、今では小中学校間の接続の問題全般に「便利に」用いられています。 しかし、いじめが中1で急増するという当初の認識が正しいのか、不登校の中 1での増加にしても 「ギャップ」 と呼ぶほどの変化なのかについては、慎重であ るべきです。なぜなら、必ずしも実態を表現しているとは言い切れないからです。 とりわけ、その語感から、中1になる段階で突然何かが起きるかのようなイメー ジや、学校制度の違いという外的要因が種々の問題の主原因であるかのようなイ メージを抱くと、問題の本質や所在を見誤り、間違った対応をしかねません。
出典:https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf15.pdf
安易な表現に振り回されることなく、自分の子どもや学校、地域が抱えるそれぞれの課題を見据え、教師や学校が取り組むべき課題や自らにできることを見極める必要があると言えるでしょう。
それぞれの言葉の使われ方と考えを見ていきましょう。
小1プロブレム
幼稚園から義務教育に進学する時期に危険視されているのが「小1プロブレム」です。
1年生の学級崩壊は、特に、入学直後の児童に多く見られます。一言で教育といっても、遊びを通した情操教育とコミュニケーション能力の育成が重要な幼稚園から、小学校の環境の大幅な変化に対応することができにくい点が指摘されており、マスメディアでは、「小1プロブレム」と呼ぶことが増えています。
小学校に入学したばかりの小学校1年生が集団行動が取れない、授業中に座って いられない、話を聞かないなどの状態が数か月継続する状態。これまでは1か月程 度で落ち着くと言われていたが、これが継続するようになり就学前の幼児教育との 関連や保護者の養育態度が注目され出した。
出典:http://www.tym.ed.jp/c10/kenkyuu/h19nendo/chu101-112.pdf
幼稚園や保育園の時と小学校の授業スタイルが大きくていることが要因として挙げています。
・幼稚園や保育園の感覚で行動してしまう
・授業時間に座ることができない
・集団行動が取れない
などの行動が子供たちに起きてしまいます。
小1プロブレムの要因
実際には、この問題は日本特有のもので、海外では見られないようです。海外では、先生一人当たりの園児数が少なく、子供の自主性が動作範囲内で担当することができるようになっています。これに対し、日本では先生一人当り人数が多く、完全に目が届かない。その結果、微細な指示を出すこと、子供の自主性を無くす結果になります。
小1プロブレム対策
文部科学省は、2011年の新学習指導要領で「幼・保・小連携」を明記しています。指導内容が大きく変わる幼稚園と小学校との間で教員の指導に連続性を持つように措置をとるものとされています。
また、特例として「幼・小・中・一貫校」ができたり、幼稚園と小学校の生徒間の交流を実施している取り組みもあります。
とにかくも、現在の学校教育制度では、幼稚園から小学校の格差が大きく、困難を抱える子供たちも多く存在します。現行制度について改善は必要であるということです。
中1ギャップ
小学校と中学校の間にもまた、大規模な環境の変化があります。
・授業スタイルの変化
・科目別担当教員
・サークル部活動による先・後輩関係
・定期試験による勉強の負荷増大
この大きな変化が子供たちには大きな負担であり、状況がひどく、休ませたり、不登校になる場合があります。
対策としては、「小・中連携」や「小中一貫校」などが挙げられます。
小中高連携
小学校と中学校では、教科課程に大きな違いがあります。これを解消して、小学校から中学校への進学時にシームレスに接続できるように配慮することです。
2006年に改正施行された教育基本法・学校教育法では、義務教育9年を一貫カリキュラムに把握するように変更されました。具体的には、小中高の授業を同じ建物や近くの施設で実施する小学校と中学校がどのような切り口で交流を持って授業を実施などなどが試みられています。
小中一貫校
また、小・中・協力の延長にある「小中一貫校」という考えです。これは、教育基本法で改正して学際的に修正するところで検討されています。特徴的なのは、地域の事情に応じて、「5・4制」と「4・3・2制」のような学年を柔軟に切り分けることを前提としています。
これが実現すれば、1947年以降続いた「6・3制」という義務教育制度が大きく変化する転換点になるでしょう。
高1クライシス
「高1クライシス」というキーワードは、まだ新しいものです。公的には北海道教育委員会が出ていますが、Web上にあまり目立ちません。
高校に入学後、不登校や中途退学などに陥りやすい状況である「高1クライシス」を未然に防ぐためには、早期の生徒間の人間関係づくりが重要です。
そのためには、新年度が始まって間もない 4 月から 6 月にかけて、青少年教育施設などで行われる宿泊研修などの機会を活用し、コミュニケーショントレーニングなどのメニューを実施することが効果的です。
出典:http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ssa/grp/ladder06.pdf
しかし、これも「教育環境の大きな変化」が原因だとすると、
・通学距離の増加
・学校別の学力の差
・私立中高一貫校の高校入学生との関係
などが考えられます。
授業や部活動のスタイルは、中学校と大きく変化していません。しかし、義務教育ではないこと、成績に応じて退学などの危険性が発生することが、それがもつれた圧力が子供の負担になることは容易に想像ができます。
小4ビハインド
また、参考までに小4ビハインドという言葉もあります。
4年生までの算数のつまずきが、その後の算数、強いては中学校での数学の習得を困難にしていたのです。これをガイドは「小4ビハインド(=小4でのつまずき)」と呼んでいます。
出典:http://allabout.co.jp/gm/gc/440792/2/
探せば、他にも小2○○、小3○○、・・・高3○○という言葉があるのかもしれません。
保護者にできること
いくつかの用語も、子供を取り巻く環境に大きな変化が生じる可能性が学級崩壊と不登校の原因に示しています。そうならないためには、教育を学校や義務教育に任せてどんどんせず、いつも子供と通信することが重要です。もし学歴差を感じ進級した後の授業についていけないような場合には、家庭学習に確実に補充することも重要です。