小学生、中学生、高校生向けの読書感想文の文例を紹介します。
「一日江戸人」を読んで
中学生
私は歴史に興味があります。といっても、学校で習うような政治中心の歴史ではなく、一般市民の生活です。庶民生活を知る方法はないかインターネットで探していたとき、著者の杉浦日向子さんのことを知りました。杉浦さんは生前、江戸時代に関する番組の解説をしていた方だそうです。テレビでの語り口調が面白かったと知り、この本を読んでみようと思いました。
この本には、庶民の生活が細かく書かれています。食べ物、ファッション、どんな人がモテたか、お酒の話、家のことなど、生活に関することが幅広く書かれています。文章も砕けた書き方なので、本が苦手な私でも面白おかしく読むことができました。歴史の深い知識が無くても分かりやすく、興味が持てる内容です。
この本を読みながら、今と全然違うと感じたことがたくさんありました。例えば、男性がデートをするとき髪形です。今ならば、デートの直前まで一生懸命髪をとかしたり、ワックスを付けたりスタイリングします。びしっとしていたほうが、かっこいいからです。ですが、江戸の庶民はデートの2日前に髷を結い、少し崩れた感じに仕上げるのが粋なんだそうです。きっちりしすぎるのは野暮という認識だからです。同じ理由から、江戸時の庶民は武士のきっちりした衣服を野暮ったいと感じていたようです。江戸の庶民は、幕府の統制があって豪華な和服を着ることはできませんでした。でも、着物の裏地に派手な柄を使うなどのちょっとしたおしゃれで粋を演出していたのです。見えないところのちょっとしたお洒落というのは、今の感覚でも理解できるので共感できました。ですが、裃をつけきっちりと髷を結った武士の服装を野暮と感じる江戸の人々から見たら、学校の制服は野暮ったく感じるんだろうなと思います。校則違反をしているわけではないのに、ちょっとした丈とかセーターの見せ方でおしゃれに着こなす人がいます。こういった着こなしこそ、戸の人が見たら粋なのではないかなと考えました。
さらに、貯金するという概念がなかったことに驚きました。「宵越しの金は持たない」という言葉に代表されるように、江戸の庶民はお金をたくさん蓄えてはいなかったようです。様々な理由がありますが、ちょっと外で芸をすればお金がもらえるし、日雇いの仕事もたくさんあったため、お金を持たない生活ができていたようです。今の日本では、外で芸を披露するなら道路や広場なら使用許可が要ります。日雇いや期間限定の仕事はあっても、十分生活をできるほどの保証はありません。それに対し江戸時代は、例え仕事を首になったとしても、そして定職に就かなくても、今でいう生活保護が必要になることなく生活できたのだと思います。
また、江戸の人たちは物を極力少なくしていました。火事があったときにすぐに逃げるため、長屋が狭いなどこちらも様々な事情がありますが、使わないものは質屋に入れてしまうことに驚きました。これらのことから、江戸時代の人たちは今とは全く、生活に対する意識や考え方が違うと感じました。
奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、江戸、明治…と、時代を重ねるほど文明が発達して良い社会になっていると思い込んでいました。この本を読み、果たして本当にそうなのか?と考えさせられました。今の日本は、江戸時代よりも物がたくさんあります。和洋中の料理を食べることも出るし、温室栽培でいつでも野菜が手に入ります。安価な生活用品や洋服、娯楽も多く存在します。パソコンやスマホでいつでも情報を収集して友達と交流を図れます。江戸時代の人たちには、そういった物の便利さはありません。ですが、使えるものは直したり、リサイクルしたり、あるいはリメイクして最後まできちんと使い切り、困っている人がいればちゅうちょなく助け合いをします。お金や景気、就職だ学歴だとキリキリせずとも、おおらかに、そして活気あふれる生活を送っていました。本書の冒頭にある「多くを望まなけりゃ、結構のんきに暮らせる」ゆとりのある生活こそ、多くの社会問題やストレスを抱えて生活している今の私たちに必要なのではないかと思いました。(1,682文字)