フランス大統領選挙とフランス政治制度を5つの観点から解説

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次のフランス大統領が決まるのはオランド大統領の任期が切れる2017年です。フランスの政治制度は典型的な半大統領制であり、よくセンター試験や小論文で取り上げられます。小論文で論じるためにはまずは制度を理解していなくてはいけません。今回はフランス大統領制、フランスの政治制度について解説していきます。

フランスの政治制度は半大統領制

フランス革命後も立憲君主制、帝政、議院内閣制とさまざまな政治制度をとってきた歴史があります。現在のフランス政治体制は「第五共和制」といわれ、大統領の権限が大きく強化された政治制度となっています。フランス大統領は国民から直接選挙で選ばれます。アメリカの大統領制に似ていますが、下院の解散権や国民投票にかける権利などを持っている点では、アメリカ大統領よりも強力な権限をフランス大統領はもっているといえるます。しかし、フランスには首相があり、内閣があります。首相・内閣は国会の下院である国民議会からの信任を受けていなければなりません。そういった意味で、議院内閣制的な要素も強く残っています。こうしたことから、フランスの大統領制は「半大統領制」といわれています。似たような形の国にはドイツがあげられます。

小論文やセンター試験に対応するためには、アメリカ大統領制との比較、日本やイギリスなどの議院内閣制との比較ができることが最低条件です。

フランス大統領選挙のしくみ

「半大統領制」フランスの政治体制は、大統領制と議院内閣制が大統領権限優位の形で共に成り立っています。第5共和制のもとでのフランス大統領は、国民の直接選挙で決められていて、23歳から立候補できます。ただし、国会や県会、市町村長などから500人以上の署名を集め、憲法裁判所に提出しなければなりません。それでも多くの政党が存在する多党制のフランスですので多くの人が立候補します。過去の大統領選挙で、いきなり過半数の得票をあげた候補はいません。そこで、第1回投票での得票数上位2人を対象に、決選投票を行います。これによって、過半数の支持を得た大統領を選ぶ仕組みになっています。日本の自由民主党や民進党が党首を選ぶのに似ていますね。

フランス大統領の任期

フランス第五共和政では当初、任期を7年としていて当選回数に制限はありませんでした。しかし、2000年の国民投票による憲法改正で任期は5年に短縮されました。その後も再び憲法が改正され、連続した任期は2期までに制限され、また議会における大統領の演説が可能になりました。

フランスのように比較的簡単に改正できる憲法を軟性憲法といいます。反対に日本のように手続きが難しい憲法を硬性憲法といいます。小論文では憲法改正についての意見を聞かれることはまずないでしょう。しかし、小論文で日本国憲法がどのようなものなのか説明を求められることはあるでしょう。大学の先生がどういう活動をしているのかを知ると受かりやすい小論文を考えやすいです。

フランス大統領の権限

単なる行政権限の保持者というより、国民の支持に基づき司法・立法・行政の上に立つ国家元首の位置づけが強いです。軍の指揮権、外交権、首相の任免権、国民議会の解散権、法律や条約・憲法改正案を議会を通さず、直接国民投票にかける権利、自身の免責特権および恩赦を与える権利が大統領の専権事項です。

フランス政治の対立軸は2つではない

普通、先進国では左右、つまり社会民主主義か保守主義かという対立軸にそって、それぞれ政党ができているのが普通です。しかし、フランスはもう1つの軸、つまり「議会政治を尊重するか、それとも否定的に考えるか=大統領権限を強化するか」という対立軸もあります。後者の考え方は、ナポレオン以来フランス政治のなかでたびたび出てくる「カリスマ的英雄による人民のための政治」を熱望する考え方です。このような考え方を、政治学では「ボナパルティズム」ということがあります。フランスの政党は、左右、そして議会主義かボナパルティズムか、という2つの対立軸が存在しているのです。

政治学部・学科の小論文の場合は、デモクラシーなどといったカタカナの言葉は多く出てくるでしょう。小論文の中に、政治学の専門用語を混ぜれると評価が上がります。