ヘイトスピーチに関して一部で社会問題となり、国会でヘイトスピーチ対策法が成立しました。そもそも、ヘイトスピーチとは何でしょうか、ヘイトスピーチ対策法とはどんな法律でしょうか、また小論文にはどんな出題が考えられるでしょうか。「ヘイトスピーチ」は共生社会や表現の自由など様々なキーワードと関わりあうため、2017年の小論文や面接などで要注意なワードのひとつで間違いありません。今回はヘイトスピーチ対策法を解説していきます。
ヘイトスピーチの定義
この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の
域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの
(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘
発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知する
など、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地
域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。
出典:http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/190/pdf/t071900061900.pdf
ヘイトスピーチ対策法ではヘイトスピーチの定義はこのように示されています。簡単な言葉に直すと、外国出身であることを理由に日本から排除するようにあおる差別的な言動を指します。
小論文での注意点は、日本のヘイトスピーチ対策法においての定義ですので、これに異を唱える人もいます。しかし、ヘイトスピーチの法的根拠はこれが唯一です。冷静に判断しながら対応しましょう。
罰則規定のない理念法
ヘイトスピーチ対策法は罰則規定がない、いわゆる理念法と呼ばれるものです。なので、法律の趣旨に違反しても罰を与える規定はありません。ほかに理念法として挙げられるのは環境基本法などがあります。理念法と反対に刑法など実効性のある法律があります。
この程度の知識は法学部の小論文であれば出てくる可能性があります。社会学部系統の小論文でも要注意です。
表現の自由との兼ね合い
ヘイトスピーチ対策法が理念法になった一番の要因は日本国憲法21条の表現の自由が保障されていることです。ヘイトスピーチ対策法が恣意的に運用されてしまえば表現の自由を脅かすことになります。そもそも、理念法すらも表現の自由の侵害とする主張もあり、今後も議論を深めていく必要があります。
表現の自由とヘイトスピーチ規制は小論文で狙われやすいポイントになるので気をつけましょう。
適法対象外になる存在がいる
ヘイトスピーチ対策法では、法律が対象とする言動の範囲が狭いことが問題とされています。「本邦外出身者」という限定によってアイヌや沖縄、被差別部落出身者などが除外されるおそれがあること、さらに「適法に居住するもの」という要件によって超過滞在者などが除外されるおそれがあることが強く指摘されており、実際、法律を議論の最中もここでもめていました。また、日本国内で日本人または外国人が、日本人に対して差別的な言動をしたり、地域から排除するような言動をしたりすることは法律上ヘイトスピーチにはなりません。
小論文で求められるのは広い視点を持ったうえで自分の意見を述べられることです。同意できなくても広い意見を知り受け入れる姿勢が必要です。