家庭教師って稼げるイメージと稼げないイメージの両方を持たれていますよね。
少子化の時代になって教育業界はなかなか稼げなくなっているのではないかと言われますが、実は共働き家庭が増えて家庭教師の需要は増えています。
むしろ、子ども一人にかける教育費が増えていて、チャンスの業界でもあるのです。
講師一人ひとりの立場から見ても、求人情報誌やハローワークでの家庭教師の時給の高さに目がとまります。時給3,000円や時給4,000円以上の募集も多数あります。家庭教師は高収入のアルバイトの代表的な存在です。高収入で楽に稼げるというイメージがあります。
本当にそんなことができるのでしょうか。
経験者の体験談から、家庭教師で月50万円を稼ぐテクニックをまとめました。
新宿区に住むAさんは、13件の家庭から平均時給3700円あまりで、週実働34時間で月間では50万円の収入をあげています。
家庭教師に必要な能力は何か、学歴や知識がなくても家庭教師をやるテクニックや、時給をあげる秘訣、個人契約の方法などをまとめました。
この記事はこれから家庭教師を依頼してみようか、家庭教師をどうやって探したらよいかという生徒やその親、保護者のみなさんにも参考になる部分が多いと思います。
1、家庭教師に必要な能力は知識や学力ではない
まず、典型的な勘違いが「東大卒の」「医学部の」学生や卒業生に依頼すれば、東大や医学部に入れるという考えです。自分ができるのと教えるのは全く別です。
むしろ、何の苦労もなく東大や医学部に受かっている人は、分からなくて何とかして家庭教師に頼ろうという人の気持ちが分かるはずがありません。
家庭教師に本当に必要な能力は、学歴ではなければ、知識や学力ではありません。
必要なのは一般的な社会常識です。
不思議なことに、家庭の側でもこうしたことを誤解していて、無礼で世間知らずな学生に高い月謝を払って何の成果も得られないということで、家庭教師というシステムが成り立っているというのが実情です。
基本的にはそうした本音の部分は、市販されている書籍や、予備校、塾、家庭教師派遣会社などでは一切語られていません。学歴を信仰させ、学歴を持っている人に高い給料を払っているのが当たり前だと思い込ませれば、それが売り上げにつながるからです。
参考図書:東大家庭教師の子供の頭が良くなる教え方
2、絶対に教えてはいけない
知識や学力がなければどうやって教えるのか?
実は家庭教師をやっていて、直接生徒に対して「教えている」講師は3流です。
教えることはかえって生徒の自分から学ぶ力を奪って、一生勉強ができない人間に育ってしまう可能性が大きいです。実際、家庭教師を依頼している家庭のほとんどは最初の志望校に合格しませんし、ほとんどの家庭は家庭教師に対して満足していません。多くのパターンは、わが子のために何とかしてやったという自己満足です。
家庭教師の役割は何かと言えば、学習についての進捗管理とモチベーションの管理です。
この記事は少し過激に書かれていると思った方もいるかもしれませんが、今の時流はアクティブ・ラーニングに向かっています。今までの予備校や塾、家庭教師は全否定されかねない状況になっています。教科書や参考書よりもはるかに多くの情報を得ることのできるPCもスマートフォンもあるのに、子どもがなんで自分で勉強できないのでしょうか。「教える」人や技術が不足しているのではなく、単にモチベーションの問題でもあるのです。
参考記事:2020年大学入試改革!アクティブ・ラーニングを理解するための10冊
参考図書:「教えない」英語教育 (中公新書ラクレ (176))
3、勉強がキライ、苦手で失敗した経験こそ活かせる
家庭教師初心者にありがちなのが勉強に自信があるから家庭教師をやってみようというパターンです。
家庭教師の派遣会社の窓口に来ている学生などを見ていると、全く常識がなく、こんな学生に子どもを任せてよいのかと疑問になること必至です。
学校で失敗して、社会の中で努力した経験の方が圧倒的に子どもに対して説得力があり、心をつかむことができるのです。
知識や学力はその妨げになります。
コツさえ分かっていれば、自分は算数の問題が解けなくても、英語の長文が読めなくても家庭教師はできます。
家庭教師で月収50万円を稼ぐための教科ごとのポイントを解説します。
参考図書:勉強嫌いほどハマる勉強法
4、中学受験算数は方程式を使わせる
中学受験の未経験者が家庭教師をしようとしてつまずくのが中学受験算数です。方程式ではなく、図や表を使って解くことに特徴があります。
つるかめ算などは本来、方程式の必要性を考える題材なのですが、中学受験算数ではわざわざ面積図を使って解かせます。
なぜこのようなことをしていたのか。
受験業界の存続のために、わざと中学受験でしか使い物にならない解法を繰り返し決まったパターンで叩き込ませるのです。
これはさっさと、方程式を使って解かせるようにしましょう。
もしも、大手塾に合わせて、図や表で、○数字や□数字の疑似方程式で解かせたいと家庭から求められたならば、契約を終了するか、塾に行く時間を家庭教師の時間増に充ててもらいましょう。家庭教師で月収50万円を稼ぐためには、参考書や動画で代替がきく大手塾に払わせるお金があるなら、こちらに払ってもらうように向けるべきです。
実際、中学受験時の計算用紙を見ると、上位2割くらいの成績の子どもは方程式を使っていて、こうした塾のテクニックだけではない子どもが大学入学まで伸びたと多くの数学教師が話しています。
参考図書:中学受験 SAPIXの算数 (中学受験実践ブックス)
参考図書:中学入試 算数 塾技100
5、英語は紙の辞書を使わせる
中学校や高校の英語は、実際、ここまで書いたコツがわかっていて指導していたなら、生徒からの質問はほとんど出ないはずです。
というのも、英語で家庭教師がやるべきことはどこまで単語を覚えたかやどこまで長文を読めているか確認をするくらいだからです。
実ビジネス、実社会で生きる英語を身につけるならネイティブの英会話教師や映像教材をすすめた方がいいです。
最初の何回かは英単語の意味を質問されるかもしれませんが、紙の辞書を用意して自分で引いて見せましょう。3回くらい生徒にやって見せれば、生徒も自分で辞書を引くようになります。
自分用に同じ辞書を用意しておいてもよいですし、自分は電子辞書で時間を短縮する方法もよいです。生徒に勧めるなら、CASIO EX-word XD-Y4900-BKが標準的です。
参考図書:ジーニアス英和辞典第5版
必須アイテム:カシオ 電子辞書 エクスワード【高校生進学校モデル】(ブラック)CASIO EX-word XD-Y4900-BK
6、国語は単純作業とダメ出し
国語は受験から1年半以上時間があるなら早い段階で漢検の受験を勧めましょう。何級でもいいので受かる級を受けさせましょう。評価や成果を図る尺度を完全に学校や入試に預けてしまうのではなく、講師が自ら成果を図る尺度を設定しておき、ここまで生徒は成長したと説明できることも重要です。
漢字をひたすら覚えさせながら、もしも他にメニューが必要ならば作文を取り入れておくことです。
作文はハイレベルな受験ほど必要になります。大学受験の場合は、医学部ではすべての大学で小論文があります。
作文は単純作業だと思った方が良いです。ただ違和感のあるところを「これと違う表現で」書き換えてみるように促すのです。
要はダメだしです。
決して、巧みな表現や美しい文体を目指そうと一緒になって考えてはいけません。事務作業と思って、優れた表現に見えても少しでも意味が分からなければ書き換えを指摘しましょう。
受験が近い場合も含めて、読解の問題は解法を説明するのは時間のムダです。そんな時間があったら、生徒と一緒に本文や設問の感想を話し合いましょう。
現代文などは有名予備校のカリスマ講師がテレビ出演してタレントのようになっていますが、実はほとんどの人が彼らの解法に接したことはありません。どんな解き方なのかの解説本もありません。要は、予備校にはいかにも「講義している感じ」、つまり話法やパフォーマンスが重要なのです。
参考図書:名文を写して身につく美しい文章の書き方
7、理科、社会は生徒に説明させる
理科、社会の場合は、生徒に今、学んだ内容や、学校などで学んだ内容、その他、興味を持っていることなどを説明させましょう。「それはどうして?」を何百回も繰り返しながら、生徒が何を分かっているのかを掘り下げながら確認していきましょう。
生徒が説明に詰まったら、自分で教科書や参考書を調べて説明しようとするようになるはずです。
ここで、生徒に説明するような講師は失格です。生徒はあなたのつまらない話を聞かなくてはならないのです。生徒には自分の言葉で構築されていない知識は全く定着しません。
どんな単純なことでも、どんなテーマのことか、どんな言葉が出てきたか、生徒の言葉で語らせましょう。
計算問題の多い理科も含めて、問題演習をどれだけやったかを確認していれば、理科・社会は他に苦労することはないので問題はありません。
参考図書:子どもの力を引き出す新しい発問テクニック (ナツメ社教育書ブックス)
8、予備校の動画サイトを活用
今まで説明した方法で家庭教師をやってみる自信がなければ、講義の様子が見られる予備校の動画サイトや無料の動画サイトを活用して、予習のためのワンポイントのアドバイスの知識を仕入れておくこともできます。
もちろん、外部の動画活用を中心にして家庭教師がそれを補佐するというスタイルもアリです。生徒の側の要求で学習計画が組み立てられているような段階ならば、その後の学習習慣の継続の意味からも問題ないでしょう。
タブレットやPCのセッティングや保護者に対する説明を行うだけでも家庭教師の役割としては大きいものがあります。
9、時給をあげるには数を打つこと
ここまですべてを実践しても、すぐに家庭教師で月収50万円を稼げるようになるわけではありません。
やはり、たくさんの契約先を確保しなければなりません。
個人契約や派遣会社を経由する方法と様々ありますが、とにかく同時並行すると考えて手を休めずに新規開拓の努力をすることです。
家庭教師派遣センターには、すべて登録すると思っていてもよいと思います。
依頼はすべて受け入れるという心構えで、理系中心、文系中心、中学受験、大学入試向けとキャラクターを使い分けてもよいでしょう。
数を打つためには、中学入試だけに絞ると平日の日中が埋まらないので、予備校生の契約先を確保することも大事です。
医学部を志望する受験生に対応することも重要です。傾向が似ているので対応しやすいでしょう。
参考記事:
10、個人のホームページで実績をアピール
家庭教師で月収50万円を稼ぐためには家庭教師派遣会社に登録して、そこからの紹介を受けるとしても個人契約の方がやはり契約金額が高くなるので、個人契約に切り替えたいと考えるはずです。
個々の派遣会社の規約や契約内容などを確認する必要がありますが、派遣会社を利用していても可能な範囲で個人契約につながる様々なツールを準備しておく必要があります。
例えば、初めて訪問するときに渡す名刺、日々の報告メモ、使用する原稿用紙や計算用紙などに講師名や連絡先を印刷しておいてが分かるようにしておくこともチャンスを広げます。
また、名刺や使用している書類に統一感があれば、信頼感が増します。
こうした直接的に近いアプローチに加えて、ホームページを作成しておいて、自己紹介、指導方針、料金案内、実績などを細かく掲載して先方から確認してもらって問い合わせをもらうのが最もよいパターンです。講師名でGoogle検索して、ホームページを見たら料金が載っていて、直接契約した方がよいということが分かれば良いわけです。
実名を公開したくないという人は「○○センセイ」のようなニックネームを使ったり、バーチャルオフィスを活用するのもよいでしょう。
情報を公開して仕事をしていることが分かれば、顧客の家庭側の安心感も増します。
11、教材を自分で作ってはいけない
家庭教師で月収50万円を稼ぐためには徹底的に一つ一つの契約先での仕事、指導法を効率化しなければなりません。自分で教材を作るなどはもってのほかです。教材を作ってしまうと余程、使いまわしの聞くものでもない限り、メンテナンスや後日の質問対応が必要になりただただ時間の浪費になります。
最も良い方法は、初回の打ち合わせや契約時に、教材はすべて生徒用に1部、講師用に1部と2部ずつ購入するように取りきめて、講師用の1部は裁断・スキャニング(自炊)してタブレットで確認できるようにしておくことです。
1日に複数の家庭を訪問し、複数科目を担当して全部自前の教材はなしということになると、荷物がとてもカバン一つでは足りなくなります。タブレット端末の活用は欠かせないでしょう。コピーした教材を使わないことも手間を削減するためには大切です。
教材選びで重要なことは、過去問を中心にすることです。赤本や有名予備校が出版している過去問集を活用することは欠かせません。
決して、実際に使われた問題集を使わないことです。これは、文章が中心の国語、社会、英語などの教科や、選択肢で選ぶタイプの受験については特に注意が必要で、クセのある問題集に慣れてしまうと実際の入試問題に対応できないばかりか、講師がその分、内容について理解しておかなければならないことになります。過去問であれば解説が複数出回っているので、解法が分からずに困っているという場面は起きません。
12、良い顧客・家庭の見分け方
最後に、家庭教師で月収50万円を稼ぐためにはとにかく数が大切です。常に新しい顧客を探す姿勢でいることです。1週間に2日は休日を作っておいて、1週間の時間割がすべて埋まっていても、新しい契約先を得るための訪問などに活用しましょう。
そして良い条件で契約できる家庭があれば、すぐに時給の低い契約は終了させるようにしましょう。
家庭教師派遣会社は仕事の多い時期と少ない時期がはっきりしています。中学受験だけなどに絞るなら一つの会社だけを利用する方針にして、家庭教師派遣会社からの契約を必ず優先するようにしてもよいのですが、幅広い対象で構える場合は一つの家庭教師派遣会社では仕事量が全く安定しません。仕事の紹介が多い会社も、2,3年で他の会社に抜かれてしまう場合が多いです。
その中で、良い顧客・家庭の特徴は、「情報リテラシーが高く・情報量が多い家庭」です。自らも様々な予備校や塾、入試説明会に出向いたり、メールやSNSを活用して情報の比較ができている保護者や子どものいる家庭です。様々な情報を比較しながら、積極的に問い合わせを行ったりして、良い条件での契約につながりやすい傾向があります。
逆に、連絡先に、メールアドレスなどが全く書かれていない家庭は、最初から仕事を受けない方がよいかもしれません。やり取りが電話連絡になってしまうと時間のロスや事務負担が大きくなり、さらには情報量が少なく取りあえず営業の印象などで決めている傾向があります。
以上です。いかがでしたでしょうか、まだまだ紹介できていない体験談もありますが、家庭教師を個人契約に切り替えたり、個人契約での生徒を探すポイントはまた改めて解説していきます。
家庭教師の側、講師目線で書いていますが、学習のテクニック、教授法などは保護者や受験生のみなさんにも参考になるポイントがあるでしょう。
月収50万円を稼ぐ家庭教師が生徒に取ってよい教師とは限らないかもしれませんが、今までの家庭教師にまつわる勘違いを解消すれば成績アップ、志望校合格への近道になるはずです。